秋山瑞人『イリヤの空、UFOの夏』

2012年05月04日 14:49

秋山瑞人『イリヤの空、UFOの夏』★★★★★
 
 

「6月24日は全世界的にUFOの日」新聞部部長・水前寺邦博の発言から浅羽直之の「UFOの夏」は始まった。当然のように夏休みはUFOが出るという裏山での張り込みに消費され、その最後の夜、浅羽はせめてもの想い出に学校のプールに忍び込んだ。驚いたことにプールには先客がいて、手首に金属の球体を埋め込んだその少女は「伊里野可奈」と名乗った…。おかしくて切なくて、どこか懐かしい…。ちょっと“変”な現代を舞台に、鬼才・秋山瑞人が描くボーイ・ミーツ・ガールストーリー、登場。

せつない!

あまりにも結末が悲しくて、読み終わってからもせつない気持ちが取れない。

物語は夏休みの最後の夜から始まる。

夏休み最後の夜に浅羽がプールで出会った不思議な少女。
手首に銀色の玉が埋め込まれており、大量の薬を持ち歩いていたり、やたら緊急の電話がかかってきたりと、謎が多い。

伊里野と名乗る少女は翌日、浅羽のクラスに転入してくる。
しかし彼女は世界を動かす大きな出来事に関わっていて……

当初は無口で周囲に心を開かない伊里野も、心の傷を抱えながら、少しずつ心を開いてくる。その繊細さから目が離せなくなる。
世間知らずな伊里野の言動は場面によっておかしくもあり、せつなくもある。

ラノベに分類されるほどの易しくて軽い文章と少ない冊数で、壮大な世界に入り込んでしまった。
『鉄コミュニケイション』も良かったし、凄い作家さんだなぁ。
次は『猫の地球儀』を読んでみたい。

一気読みしましたが全4巻。OVA化もしてます。

  
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越谷オサム『陽だまりの彼女』

2012年05月02日 19:28

越谷オサム『陽だまりの彼女』★★☆☆☆

 

幼馴染みと十年ぶりに再会した俺。かつて「学年有数のバカ」と呼ばれ冴えないイジメられっ子だった彼女は、モテ系の出来る女へと驚異の大変身を遂げていた。でも彼女、俺には計り知れない過去を抱えているようで―その秘密を知ったとき、恋は前代未聞のハッピーエンドへと走りはじめる!誰かを好きになる素敵な瞬間と、同じくらいの切なさもすべてつまった完全無欠の恋愛小説。

賛否両論に分かれるであろう小説。残念ながら私は否。
面白いし、予想外の結末が待っていたけれど、そこに感激できず冷めたまま本を閉じてしまいました。

基本的には、べたべたに甘いカップル→夫婦の物語。
お姫様だっことか、結婚指輪とか、とにかくほんわか甘い。そのへんは爆発しろと思いつつ癒されつつ読めた。

しかし、結末が凄くて心の準備ができなかった。そういう本ならこう、書いておけよ!!ネタバレになるからこのくらいで止めておくけど!!

そういえば、この本は自然な評判からではなく、書店や出版社側のプロモーションが成功したヒット作品だという印象。
これだけ推されている本はどんな内容なのだろう、という興味で買いました。ミーハーとも言う。

確かにあんまりない設定の新しい小説だし、最近話題の恋愛小説が無いから推されてたのもわかる。

ただし「女子が男子に読んでほしい恋愛小説No.1」の根拠は全くわからない。
男主人公・浩介が理想的なので、全国の男子にこれを読んで見習ってほしいかららしい。そうかぁ?
一応女子ですが、私はむしろ真緒のキャラクターが良いと思ったなー。
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中村文則『何もかも憂鬱な夜に』

2012年05月02日 01:51

中村文則『何もかも憂鬱な夜に』★★★★☆

 

施設で育った刑務官の「僕」は、夫婦を刺殺した二十歳の未決囚・山井を担当している。一週間後に迫る控訴期限が切れれば死刑が確定するが、山井はまだ語らない何かを隠している―。どこか自分に似た山井と接する中で、「僕」が抱える、自殺した友人の記憶、大切な恩師とのやりとり、自分の中の混沌が描き出される。芥川賞作家が重大犯罪と死刑制度、生と死、そして希望と真摯に向き合った長編小説。

先日の新聞で読んだけど、最近「嫌な気分になるミステリ」略してイヤミスが売れているらしい。
「ハッピーエンドは嘘くさい」と感じる人に評判なのだとか。
自分にも少し思い当たる部分がありドキッとする。

この『何もかも憂鬱な夜に』はミステリではないけれど、重く息苦しい空気がのしかかる小説。
ちなみにピース又吉がお薦めしていた本でもあります。

何かを我慢し続けて生きているような、今の自分が本当の自分ではないような不安。
いつか自分が何かしでかしてしまうのではないかという予感。

「こんなことを、こんな混沌を、感じない人がいるのだろうか。善良で明るく、朗らかに生きている人が、いるんだろうか、たとえばこのノートを読んで、なんだ汚い、暗い、気持ち悪い、とだけ、そういう風にだけ、思う人がいるのだろうか。僕は、そういう人になりたい。本当に、本当に、そういう人になりたい。これを読んで、馬鹿正直だとか、気持ち悪いとか思える人に……僕は幸福になりたい。」

刑務官である主人公にとっての生と死は、死刑にも繋がっていく。

生死について、死刑について、この本に絶対的な解答が載っている訳ではない。
そんな簡単に是非が決まる問題ではない。全ての人が向き合いつづけるべき問題だから、これでいいのだと思う。

「おそらく、死刑と言うのは、人間が決められる領域じゃないんだ。だから、色々と矛盾が出てくる。矛盾が出てくること自体、その証拠だよ……。その不可避の矛盾が出るものを、それでもやるか、やらないかだろう……」
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2012年4月に読んだ本まとめ

2012年05月01日 17:08

だいぶ暖かくなってきました。もう5月ですね。
先月は酷い面接ラッシュで(しかも全然通らないし)時間的にも心理的にも余裕がなく、読書も出来ませんでした。
ということで先月読んだ本。

本棚 - 2012年04月 (5作品)


可愛い女の子に癒されたかったんだろうなぁ……。
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小塚崇彦『ステップ バイ ステップ』

2012年04月24日 01:24

小塚崇彦『ステップ バイ ステップ』★★★★☆

 


エッセイって書き手の意外な一面が見えるものだけど、最初から最後まで「やっぱりこういう人だよなぁ」という納得しかなかった一冊。
それだけ、小塚選手の演技にはその性格が現れていると思う。

端正で、ストイックというか。
音を丁寧に拾って、音楽をそのまま体現するような演技に吸い込まれる。

そんな印象通り、各大会の体験や思ったことを綴ったこのエッセイからも、素直で真面目で、たどたどしくても自分の頭で考える人なんだなぁと思ったのでした。

それにしても、どのスポーツ選手にも通じることだけど、体力よりも精神力の強さに感心することが多い。
前日に失敗した4回転を躊躇なく飛ぼうとしたり
転んでも立ちあがった瞬間にはもう毅然としていたり
精神を腐らせずに何度も挑戦する姿勢を尊敬する。

ちなみにフィギュアスケートは私が真面目に見る数少ない(というか唯一に近い)競技です。
しかも特に母国を応援する訳でもなく、ただ色々な表現を見ることが好きなので、応援と言うよりも美術鑑賞に近い趣味だと思う。
1回生で観に行きたいんだよなぁ。
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